榊原記念病院は、東京都心から西へ約30分、一部の東京都民は山手線の外側を「都外」と呼んでいますので、バリバリの「都外」、府中市にあります。府中市は、公園などの公共施設が充実しており、子育て世代には人気の高いところです。さらに自宅から徒歩5分のところに東京競馬場もありました。休日には娘をつれて競馬場内の公園にいくという理由をつけて、馬券を購入し遊具で遊ぶ娘とともに熱くなっていました。
榊原記念病院は、循環器専門病院として国内屈指のハイボリュームセンターです。病床は循環器単科で320床、手術室4室、CCU12床、ICU16床、ACU18床を有し、年間心臓カテーテル検査 約3500件、PCI 約800件、心エコー 約25000件(うち経食道心エコー 1800件)、特に心臓外科開心術は約1300件と国内一の件数を誇ります。このような病院を留学先に選ばせていただいた最大の理由は、まだ山形県で確立していない構造的心疾患(Structure heart disease, SHD)の診療概念を経験したいということでした。特にSHD診療の代表であるTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)については、国内治験実施施設の一つであり、TAVI適応スクリーニングのためのCTや心エコーによる画像診断技術や実際の手術手技に関して当時から群を抜いており、これらの技術を経験して山形に持ち帰りたいと思うようになりました。
卒後12年目で新天地にいくこととなりましたが、3-6年目が主体の専修医として採用されたため、若い先生方とともに容赦なく洗礼を受けました。毎日20-30人の入退院、ひっきりなしに到着する救急車対応、その裏で朝から晩まで同時進行する4カテ室。入職当時は専修医が例年よりも少なかったため、ルーチンの日常業務が回らず、若干名の専修医が離脱。4月中旬から1か月間は毎日10件のCPXを9時~17時まで担当することとなりリハビリ室にほぼ軟禁状態となり、さすがに病みそうになったこともありましたが、家族や同僚の支えにより、なんとかこなしていくことができました。
怒涛のように過ぎていく毎日でしたが、その中で様々な経験をすることできました。山形大学卒で放射線画像診断専門であります井口信雄先生には、特に目をかけていただき、TAVIスクリーニングにおける心臓CTの解析を中心に学ばせていただきました。TAVI候補症例全例のCT解析に関わらせていただきながら、研究テーマもいただき、日循やAHAでも報告させていただきました。副院長の高山守正先生には、閉塞性肥大型心筋症の診断と治療についてご教示いただき、いつも目から鱗のお話しばかりでした。PTSMA(経カテーテル的中隔心筋焼灼術)の手技についても手取り足取りご指導いただきました。今後、山形大学で適応症例に対し導入をしていく予定です。循環器内科部長である桃原哲也先生からは、PCIの技術はもちろん、TAVIの手技について、ハートチームをまとめていくには何が必要なのか、厚くご指導いただきました。まだまだ書ききれないほどのたくさんの貴重な経験をすることができました。山形でのTAVI導入をはじめ、実臨床に生かしてやっていきたいと思っています。
このような国内留学の機会を与えてくださいました同門の先生方に深く感謝いたします。誠にありがとうございました。