私の在籍した2016年は、カテーテルアブレーション777件、EPS 54件、植込み型デバイス治療145件(CRT 22件)、デバイス抜去術(レーザーシースを用いるもの)26件、2017年は、カテーテルアブレーション766件、EPS 71件、植込み型デバイス治療128件(CRT 28件)、デバイス抜去術23件が行われました。もちろんPCI、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)、LVAD(左心補助人工心臓)植込み術なども行われています。私はクリニカルフェロー(レジデント)として直接治療に携わらせていただく中で、不整脈治療に対するアプローチの多様性、新たな治療機器を用いた治療など、本当に多くのことを学ばせていただきました。また、国内外から多くの留学生・同志(レジデント)がいることも良い刺激となりました(時には愚痴を言い合い、時には英会話学習をしていました)。このようなハイボリュームセンター(治療症例数の多い病院)で学ぶ機会をいただいたことは、「百聞は一見に如かず」で毎日が新鮮でした。
留学して山形大学不整脈チームでもハイレベルな治療が行われていることを実感しましたが、未熟な私にとっては、当初、突然メジャーリーグ球団に入団してしまったような気分でした。世界的にご高名な青沼和隆教授、野上昭彦先生をはじめとする筑波大学の先生方と行うアブレーション治療は非常に緊張感の高いものでした。筑波大学での不整脈研修は、一から手取り足取り教わる……というものではなく、怒涛のように過ぎていく日々の診療の中で、自ら考え、悩み、そして答えを見つけていくというスタンスです。青沼教授や野上先生などから数多くのヒントは与えられますが、当初は右も左もわからず、レジデント仲間の先輩・後輩に恥を忍んで多くのことを聞いていました。それでも毎日、些細なことでも成長できているのが嬉しくてがむしゃらに過ごしてきました(本当にそのことを実感するのは、留学後しばらくしてからでしたが……)。
筑波大学の不整脈治療の特徴の一つとして、心室頻拍など心室性不整脈に対する治療件数が多いということが挙げられます。茨城県では心室頻拍の有病率が高いのではないかと思うくらい、毎週のように緊急アブレーションの患者が搬送されてきました。県内外含めて他院での治療不成功例が搬送されてくることも多かったのですが、生命の危機に瀕している患者が劇的に回復していく姿を目の前にし、その治療に携われていることを誇りに感じました。
留学最後の1年はベッドコントールの大役をおおせつかりました。入院予定、アブレーションなどの治療予定、担当医割り振りなどを決定する権限があり、青沼教授から直接ご指導いただく機会も増えました。そのような毎日で、アブレーション治療、デバイス治療の考え方や技術はもちろんですが、何よりも医療に対する強い情熱をご教授いただきました。
不易流行――俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つで、いつまでも変化しない「不易」と、時代に応じて変化する「流行」が、根本においては同じというものです。筑波大学への留学期間中は本当に発展目覚ましい数々の治療を目の当たりにしましたが、変わらぬ医療への強い情熱をもって、今後、山形の医療に貢献できるように邁進したいと考えております。これからも皆様のご指導・ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
最後になりますが、このような機会をくださった山形大学第一内科の先生方、いつも温かく見守ってくれた妻と二人の息子に心から感謝いたします。