心筋症とは
心筋症は、心臓を構成する筋肉(心筋)の病気の総称です。拡張型心筋症・肥大型心筋症など心臓を原発とする原発性心筋症と、アミロイドーシスなど心臓以外の全身疾患を原因とする二次性心筋症があります。
心筋症は、これまで原因不明であったり、有効な治療法がないものが多かったのですが、医学の進歩により、原発性心筋症の多くは遺伝子に原因があることがわかり、一部の心筋症は治療法が開発されてきています。当院は希少疾患を含むほとんどの心筋症の診療に対応しており、専門のチームで診断・治療を行っています。
代表的な心筋症
1. 拡張型心筋症
どんな病気?
拡張型心筋症は、心臓の筋肉の収縮する力が弱くなり、全身に血液を送るポンプ機能が低下してしまう病気です。厚生労働省が定める特定疾患(難病)に指定されています。子供からお年寄りまで幅広い年齢に発症し、一部の拡張型心筋症は遺伝すると考えられています。
自覚症状として、動悸や呼吸困難、易疲労感など、心臓のポンプ機能低下による症状がみられます(この状態と心不全といいます)。多くは進行性で、根治療法は未だ開発されていません。拡張型心筋症の5年生存率は76%とされており、死因の多くは心不全の進行または不整脈による突然死です。
しかし近年、心不全の進行を抑える薬(心保護薬)の目覚ましい発展などにより、拡張型心筋症の生命予後(寿命)は改善傾向にあります。適切な治療の結果、心臓の収縮力が改善する現象を「左室逆リモデリング」と呼びます。左室逆リモデリングをみとめた患者さんの生命予後は良いことがわかっています。
検査と治療
当院では、拡張型心筋症が疑われる患者さんに対して、心臓MRI検査、PET/CT検査などの精密検査を行って詳しく原因を調べ、患者さんごとに最適な治療を選択しています。心保護薬の綿密な調整に加え、病気を悪化させる不整脈や弁膜症などの併存症に対して適切にカテーテル手術・心臓デバイス植込手術などを行っています。
左室逆リモデリング現象をみとめる患者さんの割合は、過去の本邦の報告では35~55%程度とされていますが、当院では約7割の患者さんでみとめており、特に近年は9割近い方で達成できています(下図1)。一方で、左室逆リモデリングが起こるのは発症から最初の1年~1年半程度まで(下図2)であり、早期に適切な治療を行うことが重要です。
〇当院で拡張型心筋症の検査・治療を希望される方はこちら
2. 肥大型心筋症
どんな病気?
肥大型心筋症は、心臓の肥大(壁の厚さが厚くなる)をきたす原発性心筋症です。厚生労働省が定める特定疾患(難病)に指定されています。心筋の蛋白質を制御する遺伝子の変異が主な原因であり、遺伝性があります。
大部分の患者さんが無症状もしくはわずかな症状を示すだけのことが多く、検診などでたまたまみつかるケースが少なくありません。一方、症状の有無にかかわらず、危険な不整脈から突然死をきたしたり、心臓の機能が低下し心不全に進行することがあります。また、心臓から送り出される血液の出口(流出路)が狭くなり、息切れや失神などの症状が起こる場合もあります(このタイプを「閉塞型」といいます)。
肥大型心筋症も、根治療法は未だ開発されていません。不整脈の危険性が高い場合に、突然死予防の心臓植込みデバイス(植込み型除細動器)手術をおこなったり、閉塞型の場合に狭窄を解除する手術(心臓外科手術もしくはカテーテル治療)をおこなうなど、状態にあわせた治療をおこないます。
検査と治療
肥大型心筋症は、同じように心臓が肥大する他の病気との鑑別が非常に重要です。心臓が肥大する他の病気には、アミロイドーシスや、ファブリー病などの全身疾患があり、治療法が全く異なります。
当院では、心肥大の患者さんに対して、心臓MRI検査、核医学検査、カテーテル検査などの精密検査を行って病気の確定診断を行い、疾患ごとに最適な治療を行っています。鑑別が難しい場合など、遺伝子検査(外注検査)もおこないます。ご家族にも病気が疑われる場合は遺伝カウンセリングも実施可能です。
〇当院で肥大型心筋症や心肥大の検査、遺伝子検査・遺伝カウンセリング、閉塞性肥大型心筋症のカテーテル治療(経皮的中隔心筋焼灼術)を希望されるかたはこちら
3. 心アミロイドーシス
どんな病気?
アミロイドという異常な蛋白質が臓器に沈着ことで障害を引き起こす病気を全身性アミロイドーシスといいます。心臓にアミロイドが沈着すると心アミロイドーシスとなり、心臓が肥大し、不整脈や心不全を引き起こします。肥大型心筋症と鑑別が必要な二次性心筋症の1つです。全身性アミロイドーシスは厚生労働省が定める特定疾患(難病)に指定されています。全身性アミロイドーシスにはいくつかタイプがあり、心アミロイドーシスをきたすものは主にAL型、ATTR型とよばれるものです。
治療について
心アミロイドーシスは以前までは治療法がなく、生命予後も非常に厳しい病気とされてきましたが、近年治療の進歩は目覚ましく、特にATTR型については2019年に「タファミジス」という薬が本邦で使用可能になりました。
当院は日本循環器学会が認定するタファミジス治療の認定施設となっています。
〇当院で心アミロイドーシスの検査やタファミジス治療を希望されるかたはこちら
患者様へ
気になる症状やご相談がございましたら、かかりつけ医にご相談の上、山形大学医学部附属病院第一内科新患外来を受診してください。
第一内科新患外来:平日(月~金) 午前8:30~11:00受付
医療関係者の方へ
心筋症の患者さんをご紹介いただく際には、地域医療連携センターをとおしてご予約いただくか、緊急の場合は、医局にご連絡いただき、和根崎をお呼び出しください。
山形大学医学部附属病院 地域医療連携センターへのリンク:http://www1.id.yamagata-u.ac.jp/MIDINFO/t-medical/region/
緊急ご相談窓口:山形大学医学部 内科学第一講座 医局 023-628-5302